HSRP (Hot Standby Router Protocol)とは
HSRP (Hot Standby Router Protocol) とは、2台以上のL3スイッチが仮想IPアドレスを共有することにより、デフォルトゲートウェイを冗長化するCisco独自の機能です。
HSRPの冗長化の仕組み
パケット転送で使用されるアクティブのL3スイッチ障害が発生すると、自動的にスタンバイのL3スイッチ・ルーターに切り替わり通信が正常に行えます。
また、L3スイッチ・ルーターが切り替わっても仮想IPアドレスは同じであるために、クライアントPCに設定しているデフォルトゲートウェイの設定を変更する必要はありません。
さらに、MACアドレスも仮想MACアドレスを使用しているので、障害時に引き継がれるために、ARPが行われて、無駄なブロードキャストがネットワーク上に流れることもありません。
設定可能なCatalystスイッチ例
- Catalyst 3560
- Catalyst 3560E
- Catalyst 3750
- Catalyst 3750E
※L3SWの機能を有するスイッチであれば、設定可能です。
通信環境の想定
設定の概要
- アクティブのL3スイッチのVLANインタフェースを割り当てます。
- VLANインタフェースにIPアドレスを割り当てます。
- アクティブのL3スイッチとスタンバイのL3スイッチに共有する仮想IPアドレスを設定します。
- アクティブのL3スイッチを選択するために優先度を設定します。
これにより、優先度が最も高いL3スイッチがアクティブスイッチになります。 - 障害時に、アクティブスイッチが復旧した際は自動的にアクティブに切り替わるように設定します。
- スタンバイのL3スイッチの設定も、アクティブのL3スイッチと同様です。
相違点は、HSRPのスタンバイになるために、アクティブより低い優先度を設定します。
アクティブスイッチの設定例
アクティブスイッチのVLANインタフェースを割り当て
Active# enable
Active# configure terminal
Active(config)# interface vlan 1
VLANインタフェースにIPアドレスを割り当て
Active(config-if)# ip address 192.168.1.2 255.255.255.0
アクティブスイッチとスタンバイスイッチに共有する仮想IPアドレスの設定
Active(config-if)# standby 1 ip 192.168.1.1
アクティブスイッチを選択するために優先度の設定
Active(config-if)# standby 1 priority 105
優先度が最も高いL3スイッチがアクティブスイッチになります。
優先度は、0~255を指定できます。(デフォルトの優先度は100)
アクティブスイッチが復旧したら、アクティブに切り替わるように設定
Active(config-if)# standby 1 preempt delay minimum 10
Active(config-if)# no shutdown
Active(config-if)# exit
Active(config)# exit
障害時に、アクティブスイッチが復旧したら、10秒後にアクティブに切り替わるように設定します。
設定の保存
Active# copy running-config startup-config
アクティブスイッチの設定例
アクティブスイッチのVLANインタフェースを割り当て
Standby# enable
Standby# configure terminal
Standby(config)# interface vlan 1
VLANインタフェースにIPアドレスを割り当て
Standby(config-if)# ip address 192.168.1.3 255.255.255.0
アクティブスイッチとスタンバイスイッチに共有する仮想IPアドレスの設定
Standby(config-if)# standby 1 ip 192.168.1.1
アクティブスイッチを選択するために優先度の設定
Standby(config-if)# standby 1 priority 103
こちらは、スタンバイスイッチなので、優先度はアクティブよりも低い数値を割り当てます。
アクティブスイッチが復旧したら、アクティブに切り替わるように設定
Standby(config-if)# standby 1 preempt delay minimum 10
Standby(config-if)# no shutdown
Standby(config-if)# exit
Standby(config)# exit
設定の保存
Standby# copy running-config startup-config
HSRPは、Object Trackingを組み合わせることで、ネットワークの高可用性が向上します。
また、Catalystスイッチ スタックの冗長化により、さらにネットワークの高可用性が向上します。